MSコンチン
癌にかかった男の話です。
抗がん剤も効かない、家族との距離も微妙に変化して行くなか。
いよいよ、モルヒネ投薬へ。
薬名徐放作用「MSコンチン」。
即効性はないが、痛みを抑える効果が12時間つづく。
家庭のなかで、言い知れる疎外感を感じた私。
自分の居場所は、今は病院のベットのうえだけと、再入院を決めた男。
抗がん剤の副作用を軽減するための措置。
モルヒネ投与がはじまりました。
モルヒネのイメージをみなさん、どう考えます?
末期癌患者の最後の手段、痛みをとり安らかに看取る
そう、思う人?まだ、いらっしゃるでしょうね。
私も、そう思う人間の一人でした。
いよいよその段階に入ったのか、自分は?
「ここで死ぬ、俺は」私のなかに死への恐怖が、また、芽生えてくるのです。
しかし、今の緩和ケアはステージ1から患者さんに寄り添いながらサポートする。
それから、体の痛みを取ってあげる、できる限り。
モルヒネを投与することは、決して穏やかな死を迎えるためではない
生きていくためのモルヒネな投与なのです。
時代は変わり、緩和ケアは大きく考え方を変えました。
死の手助けから共に生きていくための緩和ケアに変わったのです。
初めてのモルヒネ服用の後、強烈なだるさを感じベットに寝たまま動けません。
しかし、痛みは感じず気持ちがポジティブになっていくのでした。
私は、徐々に動きまわるようになり元気になったように見えてきました。
そして、抗がん剤の副作用による痛みが消えていったのです。
モルヒネを服用することで、普段通りに動けるようになっていった私です。
孤独に消えてしまうこと
世の中から消えてしまうとことを掘り下げてみたいと思います。
病院に通う電車のなか、普段通りに職場に向かう人たち。
そのなかに私もいます。
心のなかで、「なぜ、俺だけ?違うんだ」と、自分に問いかける。
何気ない日常の風景から、もうすぐ、自分はいなくなると感じています。
歩いているときも、テレビを見ているときも、コンビニで買い物しているときも
この世界からいなくなる、消えてしまうと男の心はそのことばかり考えてしまう
死ぬという事はこういうこと、私たちが暮らす、ごく普通の世界から
私が消えるだけ、誰も気づかない気にも留めない存在なのです。
言いようのない恐怖感。
寝ているときも、家族の顔を見ているときも
自分一人がいなくなり、やがて忘れられる存在になり
家族も私がいない生活をはじめていく。
暗く深い闇へと落ちていく私。
今日は存在して、生きている。明日は存在しない、闇のなか。
もう、しゃべることさえない、怒ることも触れることも何もできない骨と化した自分。
それが消えていくと言うこと?
モルヒネ緩和
看護師さんから何かあればすぐに病院へと不吉なお言葉いただき
自宅への帰路につきました。夫婦ふたり、何も語らず。
妙なもので、副作用による痛みが消えると普段通りの生活が少しづつ
できるようになってきます。
仕事さえも行けるような錯覚を覚えます。
みんな、モルヒネのおかげです。
抗がん剤の効果は現れず数値は悪いままですが、モルヒネの力で
生きてる私に変化が表れてきました。
モルヒネの量をある、週から増やした効果なのか笑顔も出だし
明るい雰囲気が私を包みます。
モルヒネが効いている間は心がポジティブになれる気がする。
これは、麻薬患者と一緒なのか?
しかし、「まあいいや」とできることから始めた男でした。
緩和ケアの仕事は患者さんの性格や家庭環境を見る。
そして会話、患者さんとの距離を縮めていく。
信頼関係を患者さんはもちろん家族の方とも築き上げる。
そして何より大切なこと、患者さんの痛みを取ってあげること。
痛みがなければポジティブになる患者さん。
そこで生きる力を引き出していく。
だから、 「どんな痛みでも言ってください、必ず言ってください」と
我慢は絶対しないで、どんな小さな痛みでも言ってくださいと
言われます。
これが、緩和ケアの基本的な考え、痛みの軽減で生きる力を
引き出していく、その中でできる治療を行っていくことが狙い
なのではないでしょうか。
モルヒネのおかげで、日に日に元気になっていく私。
ある日から、どうしても苦手な薬を男は辞めてしまいました。
何かの栄養剤でしょうか?
その薬を、2週間ほど辞めてしまったのです。
次の診察日、それまで現れなかった抗がん剤の効果が数値に表れだしたのです。
あの薬を辞めたおかげ?いや、ただの偶然。
その日から、男の癌細胞はどんどん小さくなって行ったのでした。
医師は 「やっと効果が表れだしましたね」これなら見込みがあるかもしれません。
男の顔に笑顔が浮かびます。
しかし、薬を辞めたことは言わずにいたのでした。
抗がん剤投与から半年目のことでした。
もともと、効果が出るまで時間がかかる体質だったのか?
あの薬を辞めたことが功を奏したのかわかりませんが、
日に日に元気になっていきました。
もう大丈夫ですよ。
医師が告げた言葉に安心した私。
しかし、思いもせぬ落とし穴がありました。
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