2016年10月10日月曜日

サヨナラを言う前にもう一度



死国




 四国八十八か所の霊場を逆さに巡ると
死者が蘇る。
「逆打ち」
深い沼から蘇る死者。

 そんな場面を思い出している電車のなか。
医師から告げられた余命宣告。
死ぬってどうなるんだろう?
この世から消えてしまうことって?
家族や友人にもう会えない?触れ合えない
癌を患い、一番苦しかった頃のお話しです。

 余命半年。
しておきたいことや、会いたい人がいれば
いまのうちにしておいたほうがいいですよ。
医師から告げられた言葉に愕然とする私。
平静を装いながらも心のなかは絶望の二文字。
抗がん剤が効かぬなか、ステージ4と告げられました。

 そして、病院からの帰り道、それまでの景色が一変しました。
周りを見渡せばいつもと変わらぬ風景です。
しかし、私に見えるのはモノクロの世界。
残された時間をどう過ごすのか?
わからぬままに、さ迷い歩く私です。



死ぬということ



 人間、死ねばどうなるのだろ?
仏教で言われる死後の世界はあるのだろうか?
ステージ4の末期がん。
 
 死という言葉が頭のなかをぐるぐると回ります。
景色を見ていても、家族と過ごしていても、テレビを見ている時も
いつも死を考えている自分がいます。
眠りにつくときなどは言い知れぬ恐怖に襲われ
どうにかなりそうです。

 不確かなものへの不安、死という現実に
体も心も衰えていくばかりです。
死んでしまえばそれまで、そのあとのことなどわからない
自分にはどうしようもないと、何もできないと
気持ちを切り替える。
診察ごとに通う、緩和外来が心のよりどころに
なっていました。
何でも相談できる環境がありがたかったです。
本当に。
緩和ケアのサポートがなければ私は
どうにかなっていたでしょうね。



取り残される自分




 あと数か月、日に日に死への恐怖が増大するなか
家族との関係も変化していきます。
会話もなくなり、ひとりで過ごすことが多くなってきました。
子供はもちろんしゃべりません。
家のなか大きな溝ができたようです。
ただぼんやりと毎日を過ごす自分に
妻の鋭い視線が向けられます。
何かすることはないのか!と言いたげに。
そうですよね、情けない男です。

 そんな視線に背中を押されるように
パソコンを開いて何かを探します。
死の恐怖を紛らわすため、少しでも気が軽くなればと?
パソコンのキーを叩く毎日が始まりました。

 そして、ブログと出会ったのです。
思いのたけをブログで発散してみると
少し気分が楽になりました。

 小林麻央さんも一緒かな?

 こんな気持ちで小林さんもブログを始められたのかな?
気持ちが落ち着くと体も反応するのか?
変化が表れてきました。
抗がん剤の効果が表れてきたのです。

 日に日に良くなりだした体に希望の二文字が見えます。
この調子で頑張ってみようと家族とも話、前向きな気持ちになっていったのです。
たまたまのことかもわかりませんが、癌患者の私の病状に変化が表れたのは、
間違いなくブログを書き始めたことだと思います。
何かに夢中になれるものを見つけたのが良かったのか
医師も驚くような回復をして行ったのです。

 しかし、波はあります。
ちょっとしたことで落ち込む心。
それに合わせるかのように悪くなる身体。
心と病は連動している?
確かにそう思います。
同じ癌患者のみなさん、夢中になれるものを
見つけませんか?



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